日光2日目 帰りたい、帰れない。

(走行距離67キロ、登った標高差合計約1000メートル)


この日の朝ご飯も湯葉料理。朝8時から朝食だったので、出発は9時過ぎ。(後にこれを悔やむことになります。)


この日も朝から峠越え。「金精峠」、標高差約400メートル。昨日泊まった湯元温泉、湯の湖、男体山を一望でき、なかなか気分良く走りました。



無事に金精峠を越えました。この峠越えが今日のメインだと思っていた私は、ひと安心。


峠から少し降りた菅沼のドライブインに、こんな誘惑が。


トマト1個100円は、決して安くはない。家の近くのスーパーでも高い方でしょ。でも、もぎたてかぁ。


で、けっきょく、


この後は、お昼ご飯に寄り道しながら、標高差200メートルくらい登って、尾瀬の入り口「大清水」へ。ここから奥鬼怒スーパー林道というマイカー乗り入れ禁止のオフロード(舗装されてない道)に入ります。


実は私、オフロードには嫌な思い出ばかり。浅間山では下りのオフロードで派手に転んで両膝から血を流しました。奥多摩の雪道では1日に10回以上転んだこともあります。


でも、今回は久しぶりだし、たまにはいいかな、と気軽にOKしました。標高差も100メートルくらいだって言ってたし。


「え、標高差は400メートルだよ。」
「ええっ!?よ、400?金精峠と同じじゃない。」
「うん。オフだからもっと時間がかかるね。宿に遅れるって電話しておこう。」
「え。。。」
(あぁ勘違い。。。)


とりあえず、宿に連絡し、大清水から林道で向かう旨を伝える。(ちなみに私のFOMAは圏外、オットのVODAFONEは電波3本)
今夜泊まるのは林道の途中にある奥鬼怒温泉。どうせ、この道を行くしかない。


今が3時半でしょ。宿の夕飯は5時半。まあ、遅くても、6時には着くでしょ。オフロードと言ってもなんとかなるさ。


そんな気持ちで出発しました。


はじめは、こんなもので喜ぶ元気も。


しかし、やっぱり林道はきつい。ものすごい集中力が必要。単なる土ではなく、玉砂利のような石がいっぱいの道。マウンテンバイクといっても、タイヤはオンロード用のスリッドタイヤだし。


しかも、けっこうな急坂。いろは坂よりも勾配がきついかも。大きな石を踏むと、すぐにバランスを崩してしまう。


走行メーターを見ると、時速3キロ。歩くより遅いよ。。。


旅の始めのオフロードだったら、まだ体力も集中力もあるかもしれない。でも、昨日のいろは坂の疲れが取れないまま、金精峠を越えた上でのオフロード。きつすぎる。。。


進むにつれ、私の精神状態に異常が。。。


そして、苦しくて止まった瞬間、思ってしまった。「私、なんでこんな所にいるんだろう。」


ふと横を見ると、沢を水が流れている。普段なら、沢の水を見ると癒される。でも、今日は画像にしか見えない。「これを見るために走ってるの?」


そして、頬を涙がつたいました。


初めて、自転車に根負けしました。「もう走りたくない」と本気で思いました。


隣でオットはおろおろするばかり。


ごめんね。オットを責めてるわけではないの。自分の弱さを初めて知ったの。


今まで自転車に乗っていて、どんなに体力的に厳しくても、気力と根性でカバーできてた。その気力と根性が、音を立てて崩れたの。自分でも驚いた。


すこし落ち着いてから走り出すけど、やっぱり途中で止まっては涙が流れる。「帰りたい。」とつぶやく。


でも、どこにどうやって帰るの?進むしかないのよね。宿はこの道の先だし。


こういう時に限って、ギアチェンジもスムーズにいかない。ギアがはいらず、「あぁ、もう!」と自転車を叩いてしまう。自転車のせいではないのに。。。


ぐずぐずしてると、日が暮れてしまう。すでに5時を回っている。山の裏側は暗くなるのが早いらしいし。


不思議なもので、オフロードは久しぶりだけど体は走り方を覚えている。つらいつらいと言いながらも、結局ほとんど手押しせずに登りました。


あ、あのトンネルは、もしかして。。。


着いた〜!


なんとか頂上の奥鬼怒トンネルに着きました。もう、ダメかと思った。


頂上に着いたときには、すでに午後6時すぎ。辺りはだんだん暗くなってきた。感動にひたっている暇はない。林道は下りも難しい。転ぶ可能性は下りの方がずっと高い。暗くなっては大変!宿の人にも迷惑をかけてしまう!


千と千尋の神隠し」にでも出てきそうなトンネルを、自転車のライトだけを頼りに進みます。このトンネルがまた長い。1キロ近くあるでしょ。でも、路面がコンクリートなだけで、身も心も少しほっとする。


ようやくトンネルを抜けると、もう日が暮れて薄暗くなっている。先を急がねば!でも、林道の下りはスピードを出せない。ブレーキ一杯にぎりしめて、路面を選びながら降りていく。


走り始めて10分もすると、辺りは真っ暗。いよいよ、自転車のライトだけが頼り。でも、ほとんど路面が見えない。とりあえず、転んで谷に落ちたら最後なので、山側に寄って走り続ける。オットは私の後ろを着いてきてくれている。


近くでサルが「キー、キー」言っている。きっと、私たちのライトに驚いているんだろう。それとも応援してくれてるのか。。。


降りても降りても、宿の灯りが見えない。まだかなぁ。「途方に暮れる」っていうのは、こういうことを言うのね。


あっ!


やっぱり転びました。山側を走ってて良かったぁ。


ベソをかいてる時間はない。すぐに立ち上がったけど、怖いのでしばらく2人とも手で押して進む。


前から、車のライトが見えてきた。こんな時間に通る人がいるのかな?


もしかして。。。


やっぱり宿の人でした。心配して様子を見に来てくれたのです。


「いやぁ、無事で良かったぁ。あとキロくらいですよ。乗せてってもいいけど、せっかくここまで来たから全部降りたいでしょ。気をつけて降りて下さい。」


あぁ、いい人で良かった。そして、心からほっとしました。


親切な宿の人は、道に迷わないように途中で私たちを待ちながら進んでくれました。


そして、着いた〜!!!もう、こんな時は来ないかと思った。


秘境の秘湯、奥鬼怒温泉「八丁ノ湯」。意外と大きな旅館。お客さんもけっこういるみたい。


結局到着したのは午後7時半。宿のみなさん、ご迷惑をおかけしました。調理場のおじさん、おばさんも、残業させてごめんなさい。


ようやくありついた夕ご飯。

大広間はこんな状態。

とりあえず、ビールで無事を乾杯!ほんと、こんな幸せな時間が来るとは。。。


温泉は、今日も源泉かけ流し。昨日の湯元温泉より硫黄のにおいはしないけど、湯ノ花が舞っていていい気持ち!今宵も極楽じゃ〜♪


露天風呂は滝見風呂になっていて、滝を眺めながら入浴できます。滝好きの私は、ようやく癒される感覚を思い出しました。はぁ〜、と深いため息。


よくがんばったよ、私。


そしてオット、ずっとそばを走ってくれてありがとう。オットだけだったら、きっと6時過ぎに宿に着いていたでしょう。すっかり道連れにしてしまってごめんね。


今日は「根性たたき直し」の旅でした。まあ、ある意味、自信にはなりました。人間、どうにかなるものだと。


反省点としては、
・距離と時間を考えて計画すること
・苦手分野を自覚しておくこと
・自分の体力・気力の限界を知っておくこと
・自転車をたたかないこと


そして、温泉で癒された私は、「もう走りたくない」と思ったこともあっさり忘れ、オットと明日の準備をするのでした。


コメント
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shina_pooh
『おろおろしながら読んでしまいました。。自転車乗ったことないからわからないけど、本当に辛いんだろうなー。。やっぱり頻繁にこけちゃったりもするんだ。ビールで乾杯できて、達成感を味わえて本当によかった。

私も国立公園のトレイルを歩いていると、体力のない夫がいっぱい休憩したり、長いトレイルは歩けないと言ったりする態度にちょっと ”むーーー。。。” となってしまうことがあるんだけど、あゆみん夫は偉い。ちゃんと相手の体力と能力を理解してそれにあわせてあげようとする。見習います。。

本当にお疲れ様でした。』(2006/09/08 06:52)

●まうまう
『すごいー。相変わらずすごいー。
あゆみんオットについていけるのはすごいと思っていたが、本当にえらいことになってるー・・・。
ハラハラしたけど、でも、宿の人、素敵すぎ。感動した。
ウォーキングする!といって、二子玉川の駅を出発し、丸子橋までしか行けなかった私とはやっぱり違う〜。』(2006/09/09 00:59)

●axyxuxmxi
『*しなさん
オフロードは特に転びやすいです。
嫁入り前は、傷やアザを作るたびに「これでいいのか」と自問していたけど、お嫁に行った今は「もう結婚したからいいか」と半分諦めモードです。
でも、時には命に関わるので気をつけます。
旦那様より体力のあるしなさんはすごい!』(2006/09/10 20:15)

●axyxuxmxi
『*まうまう
いやいや、本当にえらいことになってました。
今回、オットにはかなり負担をかけました。ペースを合わせてもらったり、重い荷物を背負ってもらったり(洗面用具はオット、タオルは私)。
それでもかなり厳しかったけど、終わってしまえばいい思ひ出、というか、話のネタです。
宿の人には本当に感謝感謝です。
また泊まりたいけど、また自転車というのはちょっと。。。』(2006/09/10 20:28)

●pink_teddy
『よくがんばった!!
とりあえず、無事だったのがよかった。
ほんと、それだけだよ・・・
でも今回の教訓が、またより安全な自転車旅行となっていくのだろうね。』(2006/09/10 21:31)

maiko
『「ようやくありついた夕飯の写真」を見た瞬間に、私もなんかウルウルしてしまったよ。。。あったかくておいしかったんだろうなぁぁ。いやぁ、本当にすごいね。えらい。大変なことこそ後からいい思い出になったりするからね。そして素敵な旦那さま!!そして、優しい宿の人!!!いいねーいいねー。ついでに反省点として「自転車をたたかないこと」、、、って。かわいすぎる(笑)』(2006/09/12 04:04)

●axyxuxmxi
『*pink_teddyさん
何度も失敗を繰り返さないと教訓を生かせない傾向があるけど、今回の教訓は必ず生かしたいと思います。』(2006/09/14 01:05)

●axyxuxmxi
『*まいこちゃん
あの時は、苦しみにもだえていたけど、今はいい思い出と思えるから不思議。人の心って都合良くできてるから助かるね。』(2006/09/14 01:11)